その6

 

 

 

「何よ、もう帰るの? 帰って何かやる事でもあるの? 」

「いや、別に無いけれど、用事も済んだしな… 」

「じゃあ、まだいいじゃない。もうちょっと付き合いなよ、決まりね!」

美少女は写真集を手にして立ち上がり、少年の傍らに歩み寄る。サラサラの

髪の毛のシャンプーの香りが届く程の距離に迫られ、少年は緊張して身を固

くする。しかし、少女は彼の脇を通り過ぎて、廊下に通じる障子を開ける。

「さあ、いっしょに来て、祐二」

訳の分からぬまま再び廊下を進み、突き当たりを左手に折れると、すぐに外

に出る扉が有り、美少女は何事も無い様子で裏庭に出てしまう。少年はその

場にあったサンダルを突っかけて、美香の後を追う。

「お、おい、良いのかよ? 玄関は開けっ放しじゃ無いのか?」

「細かい所を気にするおとこねぇ… 門の鍵を閉めてあるから大丈夫、万が

 一塀を乗り越えて来ても、警備会社のセンサーが反応してガードマンが飛

 んで来るわ、貴重品とか値打ものが有る部屋もセンサーが仕掛けてあるの

 。アンタも、あんまりうろうろすると車で駆けつけて来るガードマンにぶ

 っ飛ばされるわよ」

何やら異様にテンションの高い美少女に導かれた場所は、さっき廊下から、

ちらっと見る事が出来た古い土蔵だった。立派な瓦屋根に白壁、そして2階

相当の高さに小さな明かり取りの窓が見えるが、鎧戸が下ろされている。

「はい、カギ」

「へ? 」

手渡された古式ゆかしい大きな鉄製の鍵を、祐二は見つめてしまう。

「ここを、開けろってか? 」

「そうよ、女にそんな重労働をさせる気なの? あんた、それでも男? 」

口は悪いが妙に上機嫌な美香のテンションに押されて、祐二は土蔵の大きな

南京錠に鍵穴に手渡された鍵を突っ込み、施錠を解く。土蔵は大きな扉は油

が切れているらしく、あけるのに一苦労だった。明かり取りの窓が閉め切ら

れているので、中は思った以上に暗い、二人は薄暗い室内に足を踏み込む。

少女が入り口附近を手探りしてスイッチをいれると、天井から吊り下げられ

た裸電球が点灯され、古惚けた土蔵の室内をぼんやりと照らし出す。

「ねえ、見とれていないで、扉を閉めてよ」

「え? この土蔵のか?」

「他の何処に閉められる扉があるの? 」

妖し気な胸騒ぎを押えながら、祐二は言われた通りに重い扉を元に戻すと、

美香は閉められた扉に取りつく。

カチャ!

(え? まさか、カギを… 閉めたのか???)

「オッケ〜! これで安心、さあ祐二、土蔵探検の旅に出発よ!」

増々妙にハイテンションに成った美香の言葉に従い、裸電球の光の力を借り

て2人は広い土蔵の奥にすすむ。

「ジャン! さあ、問題です。ここは何でしょうか? 」

戯けた様子で美香が両手を大きく開き胸を突き出す。瞬間柔らかそうな胸の

膨らみに気を取られた祐二だが、謎解きは嫌いで無いから周囲を丹念に見回

す。

「壁だね… 」

「へ〜、流石はオタクだわ、良く分かったわね」

「ここの壁だけ、他に比べて新しい、でも、中に何かが詰っているのかい? 」

「馬鹿ねぇ、怪奇小説やホラ−映画の見過ぎよ」

美香が脇に置かれている桐の箪笥の飾りを90度回すと、何かが外れる音が

土蔵の中に響く。

「うわぁ… 仕掛けが古くなって、変な音がするように成っちゃったなぁ… 」

訳の分からない事を呟きながら、少女は壁の縁に手を置くと、そのまま壁に模

した扉を開け放つ。

「隠し階段! 」

隠し扉の奥の足元にポッカリと口を開けた穴を覗き込み祐二は呻いた。

「この先に何が有るんだい? 」

「知りたい? 」

妖艶に微笑む美少女を目の前にして、祐二は好奇心が抑え切れず素直に頷く。

「あれはアタシが中学に上がる前だった… 」

美香の長い告白(?)が始まる。

「学校の体験学習が2泊3日の予定で行なわれたんだけれど、何か事故があっ

 て予定よりも1日早く帰宅したの。あの頃はパパとママと、それからお爺様

 と、ここで暮らしていたのよ。家に帰ると何時もは居るはずのお手伝いさん

 の姿が見えなかった、今考えれば、わざわざその日は休みを上げていたので

 しょうね、私が家を開ける日だったから。家に誰も居ないなんておかしいと

 思って、私は家捜ししたわ。そうしたら、いつも閉まっているはずの、この

 土蔵の扉が開いていたの。子供心にドキドキしながらここに来て、開けっ放

 しの隠し扉の奥の、この階段を見つけたの」

「ごくり… 」

祐二は生唾を呑み込み、何かに取りつかれた様に話す美少女の横顔を見つめる。

「後は、下で話すわ、ついて来て祐二」

止める間もなく美香は優雅に身を翻し、土蔵の奥の穴蔵を駆け降りてしまう。

むろんここまで来て引き返す気は毛頭無い祐二も、彼女に続いて狭く急な階段

を降りて行く。

階段の下に木製の扉が閉まっていた。

「ねえ祐二、見て、ほら、ここに大きな節穴があるでしょう。子供ならここか

 ら中を覗けるの。あの時アタシも、ここから中を覗いたのよ」

言われた通りに、腰の辺りに直径1センチ程度の節穴がある。

「いまでも、ここからしか中を覗けないのかい? 」

「いいえ、この扉に鍵なんて無いわ」

彼女は簡単に扉を開けるが、中は薄暗くて何が有るのか良く見えない。

パチン…

スイッチの音と共に上の階と同じような裸電球に灯が点る。目の前に広がる光

景に祐二は驚き言葉を失う。そこにはSM小説に登場する責具の数々が並べら

れているのだ。木製で、なんと馬の首を模した飾り付きの三角木馬や、壁に取

り付けられた十文字の磔台、天井からは獲物を晒して釣り下げる為のごつい鎖

が何本も垂れ下がり、床には無造作に鞭やロープが投げ捨てられている。

「これは… 」

 

 

 


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