その4

 

 

結局祐二は週末の昼少し前にメモに記載された駅の改札を出ていた。どんな企

みがあろうとも、元々クラスで孤立している彼には大して害は無い、根暗なオ

タクとの評価にマヌケが加わるぐらいなものだ。学園の女王からの誘いは、そ

んな些細であやふやな心配事で断わるには、あまりにも惜しい。そんな理屈で

自分を納得させて祐二は駅を後にする。

地図で調べた住所は駅から徒歩で20分程度の距離だろう、残念ながら近くを

路線バスは走っていない。大きな不安と小さな期待を胸に、少年は手土産代わ

りの写真集を入れた迷彩柄のディパックを肩に掛けて歩き始める。

辿り着いた先は驚く様な豪邸だった、まるでテレビの時代劇に登場しそうな重

厚な門構えは、歴史を感じさせるが、手入れは十分に行き届いている。まるで

重要文化財のようであり個人と邸宅とは思えない大きな門だが表札には確かに

西宮と記されている。左右を見渡すと、どちらにもかなり長く白壁が続いてい

て、この屋敷の敷地の広大さを思い知らされる。この辺りは県下でも有数の高

級住宅地として知られているが、彼女の家ほどの豪邸は、他には見当たらない。

時代掛かった瓦屋根の門に圧倒されてしまった祐二は、しばらくそこに立ちす

くみ様子を窺う。ようやく気を取り直して大きな木製の扉を押してみるがビク

ともしない。辺りを見回すと、右手にある潜り戸の脇に、門とは強烈な違和感

を持つクリーム色のインターホンを見つけて、プラスティックのボタンを指で

押し込む。数秒の日に鈴を転がす様な甘い声で返事が帰って来た。

「は〜い、どなた? 」

「あ、あの、俺、いや僕は、岡本と言います、その西宮さんのクラスの知り合

 いで… 」

「ああ、祐二ね。待っていて、いま潜り戸の方のロックを外すから、そこから

 入って母屋まできてちょうだい」

彼女の言葉の終わらぬ内に潜り戸の裏で耳障りな機械音がする、試しに押して

みると小さな潜り戸は何の抵抗も無く内側に開く。指示通りに少年は頭を下げ

て豪邸の敷地内に入る。すると驚いた事に潜り戸の扉が勝手に閉まり、再び機

械音を立ててロックされたのだ。

しかし、少年はそんな些細な事に構ってはいられない、目の前に広がる豪邸の

と、見事に整備された庭園に度胆を抜かされてしまっていたのだ。正面に有る

母屋の向かって左側には、素晴らしい日本庭園が広がっている。白壁の外はど

こにでもある少し高級な住宅地であったが、内側には別世界が広がっていたの

だ。少年は中学校の修学旅行で出かけた京都で見た幾つかの高名な寺の庭先を

思い出してしまう。完璧に手入れされた庭園に祐二は見蕩れてしまっていた。

 

「祐二! 何をつっ立っているの?」

開け放たれた間口の広い玄関の上がり待ちで、迎えに出て来た美香が少年の名

を呼ぶ。問い掛けられた声の主を探して左右を見渡し邸宅の玄関に家主を待た

せていたことに気付いた祐二は、あわてて敷石の上を駆け抜けて、美少女の元

に馳せ参じる。純和風の豪邸に相応しい、堂々とした玄関の構えにも祐二は圧

倒されてしまう。しかし、それよりも遥かに少年にインパクトを与えたのが、

目の前の美少女の姿だった。

全体に黒っぽい和風の玄関先に、大輪の花を思わせる蛍光オレンジのワンピー

スを身に纏った天使が、少しむくれた表情を浮かべながら両手を腰において立

ちはだかっている。豪邸や日本庭園が与えたショックは、玄関に立つ彼女を目

にした事で祐二の頭からた叩き出される。学園での彼女は規則に従っていて、

他の女生徒のようにスカートの丈を縮めたり腰を絞り込むような改良? は行

なっていなかったから、その美貌と相俟って清楚な雰囲気が常に周囲を圧倒し

ているが、目の前の少女は驚く位に大胆に肌を露出しているのだ。両方の肩か

ら細い紐で吊り下げられたオレンジ色のワンピースは、裾丈が目のやり場に困

る程に短く、健康的な太股がギリギリまでむき出しにされている。同様に露に

された首筋から肩へのなだらかなラインが艶かしく、身体の線がくっきりと浮

き出る大胆なワンピース姿の美少女に思わず見蕩れてしまう。多少待たされて

ふて腐れていた美香も、自分の装いが目の前の少年に、彼女が思った通りの効

果を与えていることに満足して、十分に機嫌を直す。

「いらっしゃい、祐二、さあ、入ってちょうだい」

彼が上がるのも待たずに美少女は奥に引き返してしまう。慌てて祐二はスニー

カーを脱ぎ捨て、彼女の後を追いかける。庭に面した長い廊下を少年は驚きの

表情を浮かべたまま、美少女のあとに続き進む。

(なんて広い家なんだ、おいおい、庭の中にお稲荷様までいらっしゃる、あれ

 、あの奥にあるのは、土蔵かい? こりゃあ、ますます江戸時代だぜ。それ

 にしても凄い庭園だな、あの石灯篭の脇の池には、当然1匹ウン十万円の鯉

 がウジャウジャと泳いでいるんだろうな)

西宮家の財力に圧倒された少年は、言葉も無く導かれるまま邸宅の奥に招き入

れられる。

「冷たいものを持って来てあげるから、ちょっと待っていてね」

進められた座布団の厚みにさえ驚く祐二を尻目に美香が部屋を後にする。通さ

れた和室も屋敷の構えに負けない豪華な代物である。20帖近くの広さを持ち

、襖には見事な装飾が施されているが、絵心の無い少年には、ただ立派な部屋

と言うイメージが浮かぶだけだ。床の間に飾られた青磁の陶器や掛け軸の価値

も見当がつかない。待つ程も無く美少女が戻って来た。

「はい、これ」

手渡されたのは、良く冷えた缶コーラであり、少年は立派な和室とコーラの強

烈な違和感に思わず苦笑を浮かべる。

「何? 何か文句あるの? 」

彼の苦笑の意味を取り違えたのか、美香の言葉に険が隠る。

「いや、別に文句なんてないさ、ありがたくちょうだいするよ」

祐二は慌ててトップをプッシュして、冷たい炭酸飲料を咽に流し込む。美香も

同様に持って来たオレンジジュースの缶に口を付けている。

「凄い家だなぁ… 」

「そうね… 」

美少女は、あまり会話には乗り気で無い様だ、祐二はしかたなく、もう一度豪

華な和室をゆっくりと眺める。

「ねえ… 」

美香の呼び掛けに、少年は視線を彼女に戻す。

「持ってきたんでしょ、勿体つけてないで、さっさと出しなさいよ」

美少女の催促に少年は、再び辺りを見回して逡巡する。

「おい、まずいよ。誰か家族の人が来たらどうするつもりなんだ? 」

「平気よ、誰も居ないもの」

美少女は面白そうに笑いながら平然と答える。

「いないって… 」

「ここは私の家じゃないの」

 

 

 


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